回復期1
「急性期を過ぎた」ということは「これ以上急激に悪化する可能性はない」はずで、少しホッとしたのもつかの間、
「今後の流れですが、いずれ在宅で介護できるようリハビリを進めていきます」
との笑顔の説明に驚く。
いくら回復したとはいえ、まだ経口で食事もとれず、動くはずの右半身でさえ自分の思うようには動かせない義父が「在宅」で「介護」のための「リハビリ」を受けるなんて、そのときの私たちには信じられないほど飛躍した考えだったのだ。
寝たきり介護→仕事に行けない→腰痛からくる体調不良→後悔→家庭環境の悪化・・・
いままでに聞いたことのあるエピソードが数限りなく湧きあふれ、あらぬ方向に流れ出る。
もちろん不安の方向へ、である。
そうなると人間どんどん崖の下を見たくなる。
最初は意識が戻っただけでも幸せだと感じていたが、思うように食べることすらできず、好きなこともできず、日常の会話だって(もとから義父はほとんど耳が聞こえないため)お互い聞き取ることもできない。回復期とはいえ、このまま何年も過ぎていくのだとしたら、本人だってつらいだろう。
「リハビリって・・・何をするんですか?」
まだ半病人のような意識が朦朧とした状態で、まさか二本足歩行とはいかないまでも、右半身だけ鍛えても意味がないのではないか。
「動くはずの右半身をそのままほっておくと筋肉が固まって動かなくなるので、少しずつほぐしていきます。」とのこと。
「リハビリを続けて動くようになれば、この先行く施設が変わるんですよ。」
この先の施設・・・在宅介護とともに、遠い夢の先の話のはずがいきなり間近に迫ってくる。
長期入院のつもりでのんびり構えていたが、どうやら病院はいつまでもお世話をしてくれるつもりはないらしかった。
「高齢者、多いですもんね。」
病院に入った時から、前回の義母の時との対応の違いがどうも気になってはいた。
ちょっとこのあと話がダレそうなので、次回はそのあたりを書くことにする。