いつかは介護・5分の3の記録

脳梗塞で倒れた家族の介護日記でしたが、死生観なども綴ります。

急性期3

酸素マスクははずれたが、依然 点滴にはお世話になっていた。

 

入れ歯をはずしているために頬がへこむのは道理ではあるが、腕や足は徐々に細くなってゆく。

家庭菜園の土を耕して、ひと家族が使う一年分の玉葱やジャガイモを作っていた筋肉は落ち、肌の艶はなく小じわは増えていくばかりだ。

 

<なにか ほしい?>

小さなホワイトボードにペンで書く。

もとからほぼ耳の聞こえない義父とは、健康なときもよく筆談していた。

電話の内容、今日の予定、その他細かいことは書いた方が確実だし、大きな声でやりとりして疲れることもない。

目で追うことはできるようで、うなずいたり声に出したりして少しずつ会話ができるようになった。

その口元を見ていると、はっきりとではないが「口が乾いた」と聞き取れる時があった。

 

これは昨年義母が入院したときにも感じたことだが、いくら点滴で水分をとっていても、酸素マスクで呼吸していたりすると口の中はからからに乾いてしまう。

飲み込みができないので吸飲みやコップで水を飲ませることも出来ず、看護師さんに教えてもらってスポンジやガーゼに水を含ませて少しずつ口に入れる。

はじめは恐る恐るだったが、だんだんと慣れてくると、味のあるものをやりたくてコーヒーやジュースを薄めたものも口に運ぶ。

あとで聞いた話だが、柑橘系はむせやすいのでまだ与えてはいけなかったらしい。

そういえば酸っぱいせいか顔をしかめていたような気もする。

何よりも誤嚥が怖いのでチャレンジはほどほどに。



病状も悪化することなく、これで急性期は過ぎたと医師からの説明をうける。

少しずつリハビリを始めましょう、と言われ、心底ホッとすると同時に、長い道のりの始まりを感じた。