急性期2
動くはずの義父の右手がカワイイことになっていた。
ボクシングのグローブを広げたような白く大きなミトンがつけてあったのだ。
「どうした、これ?」
ミトンは緩衝材が入っているらしくふわふわして、指先が使える状態ではない。
すぐには外せないよう、固いスナップで留めてある。
なんとなく不自由そうに見えて、
「外そうか?」と聞くと、小さくうなずく義父。
悪戦苦闘した挙句、偶然スナップがはずれて、やっとミトンを取ることができた。
汗ばんだ手を乾かしながら、きっと何か理由があるんだろうなと考えを巡らす。
義父は自由になった手でしばらく天井を指しながら何か声をあげていたが、言葉にならないので私たちには通じない。
しばらくして
「じゃあまた来るね。」
と、ミトンを元通り右手につけて、病室を後にした。
翌日 看護師さんにミトンのことを聞いた。
どうやら動く右手で、わからないままに点滴チューブを触ってしまうようだ。
まだ点滴は必要なので、落ち着くまでミトンをそのままつけてもらうようお願いする。
可哀想な気もしたが今は仕方がない。
ガーゼの寝巻きを予備にもう一枚買う。
長引く気配があちこちにあった。