7×5
とはいえ、思ったよりその家族葬は良かったのだ。
本当に偶然なのだが、友引をはさんで遺体はチルドルームに安置されて、3日後の式となる。
こちらも時間の猶予があるなか、仕事の段取りも含めて冷静に動ける。
この業界でいう直葬で、お通夜なし、火葬場の中の一室を使った式だ。
なにしろ式場から火葬場への移動の手間がない。
お通夜もないから遠方からの親族の宿泊も気を使わなくていい、というより呼ばないままではあったが。
あとで親戚回って叱られてこよう、という覚悟の家族葬は、金額からみてもかなりショボいだろう、お花もロクにないのだろうと覚悟していた。
だって義母のときの1/5の金額なのだ。
当日案内された部屋は、当然狭くはあるが、幅いっぱいに飾られた祭壇、両側にたっぷりの花。
驚くほど綺麗だったのだ。つい写真を撮ってしまったほどだ。
なにも欠けることのない、きちんとした式だった。
この直葬を躊躇なく選んだ背景には、実はこの火葬場で働いていた方と知り合いで、ここで式をされる方も多いですよ、という話を聞いていたこともあった。
その頃はみんな元気で、式がそんなに疲れるものだとも思ってなかったので、火葬場で式なんて、という印象だったのだ。
でも自分たちで式を出すことになると、式場の良し悪しなんて目に入らない。
前回は大きなホールだった。
設備もしっかりしていた。
そこにある虚しさは今でも忘れない。
私も少しはデザインには興味はあるが、こういうときにデザインやセンスなんて、なんの役にも立たないのだと。
大きな舞台装置は誰のためなのか。
ここに価値を見出す人が多いのだとしたら、それで成り立つのなら致し方ない。
そうでもなくなってきたのは、金額だけが理由ではないと思う。