いつかは介護・5分の3の記録

脳梗塞で倒れた家族の介護日記でしたが、死生観なども綴ります。

3度目の正直

3度目の脳梗塞が2月に入って間もなく訪れる。


今回は小脳での発症。

脳幹に近いので、かなり危ないと言われる。

仕事はバレンタイン前の仕込みの最中。

脳幹で梗塞が起きれば、呼吸が止まるのだそうだ。



救急外来の処置室で看護師さんと血管探しをしていたときのこと。

※以下、表現がグロいのでお気をつけください。












左半身にむくみが残り、右手左手が別人のように違う。

意識はない。



「この血管どうですか?」

「そこはねえ、この点滴が入ってるのと同じだから。」


採血のための静脈を探していたのだ。

老人の血管は細くて硬いのだそうだ。

なかなか静脈が浮いてこず、やっと見つけた細い細い、糸のような血管。

いつの間にこうなってしまったんだろう。

採血用の太い針を差し込みながら、血管を探ってゆく。

普通なら血管に針が触れた途端に管のなかに血液があふれでるのだが、なにか間違えたように少し出かけて、止まってしまう。

何度か試しているうちに、血液が固まりだす。


「固まっちゃうとこの検査はできないのよねえ。」


じゃあ足はどうでしょう?

二人で足の血管を探す。

一年間ほぼ動いていないため、筋肉はもちろん、骨も血管も退化してしまったように心もとない。




動くほうの右足で見つからず、あとはむくんだ左足しかない。

やっと見つけた足の甲の血管。

「これだね!」


足の甲は手と同じように痛みがつよいのだそうだ。


痛いけど、我慢してね。

聞こえない耳にそう言い、麻痺しているほうの足を支えた。


針が皮膚を刺し、細い糸のようにしか見えない血管を探る。

何度か探るうちに、さすがに痛かったのか、動かないはずの左足がビクッと動いた。



動いたー‼

と驚く私に

動くね

と冷静な返事。



結局うまく採血できず、医師に動脈から取ってもらうことになった。





心因性脳梗塞、いつものように。

CTを見ると、小脳での梗塞。

それも起こったばかりではないらしい。



「起きたばかりなら白く写るんですが、そのあと軟化してくると黒くなります。」

画面を変えて、説明は詳しくなる。

「これが1年前に初めて脳梗塞を起こしたときの写真。白いですよね?
それが2回目の脳梗塞のときには撮ったものだと黒く変わっている。

こちらが今回の写真。
ほら。小脳のところがもう黒くなってるんです。
これが軟化したということなんですが、軟化すると脳内の圧力が上がり、すぐ隣の脳幹を圧迫してしまうと、最悪の場合呼吸が止まります。」


言葉は選んでくださっているが、先はないよと言われていることくらいはわかる。





その説明よりも、私は針の刺さらない血管のことが気になっていた。