いつかは介護・5分の3の記録

脳梗塞で倒れた家族の介護日記でしたが、死生観なども綴ります。

食 欲

「おたくのお父さんだけですよ。
ここの食事を美味しい、美味しいと言って食べてくださるのは。」


そう施設の方から聞いた。



元気な時から大食漢で、味の好みはあるものの、なんでも美味しそうに食べていた。

外食が好き、特にトンカツや味の濃いものが好きだった。

施設では嚥下のために、流動食にとろみをつけたものを3食。動く右手でスプーンを持ち、きれいに食べ尽くす。
ドロリとした液体を飲み込むだけなので消化は早いだろう。

施設で出るものだから当然薄味でカロリーもそれほど高くないと思うが、この3度の食事がなによりの楽しみらしい。


あるとき

「食事って増やすことはできますか?
と聞いてみた。

お見舞いにいくといつも「腹減った」と呪文のように繰り返すからだ。


プリンやヨーグルトなどを食べさせることはできるのだが、あまりお腹の足しにはならないであろう。

「大盛りですか?できますよ。主治医に確認してみます。」

少し粒のあるおかゆにしてもらうこともできたのかもしれない。






そんなほのぼのとした矢先のことだった。