いつかは介護・5分の3の記録

脳梗塞で倒れた家族の介護日記でしたが、死生観なども綴ります。

破 壊

いきなりだが、安全ベルト壊れてしまった。



前回の記事の車椅子用の手作り安全ベルトだ。
旅行用のスーツケースベルトのバックル部分がダメになってしまったようで、あまりにも早すぎる。
きっとなにか身代わりになってくれたのだろうと勝手にベルトに恩をきせた。



施設で情報を集めて、キルティングかデニム生地で新たに作ることにする。

久しぶりに手芸洋品店に行き、手頃な生地を見立てる。
あまり可愛いプリント地では笑いをとるどころかテンション下がるので、和柄のキルティングを1m切ってもらう。

紺地に白いうさぎが舞う、中秋の名月仕様だ。
本人はそこまで気が回らないだろうから、こちらの好みでいく。


デニムでなくキルティングにしたのは、以前子どものバッグなどを作ったときに、縫いやすかったのを覚えていたからで、ほとんど直線縫いの今回もスルスルと出来上がった。


写真を撮るのを忘れてしまったが、施設へ持っていくと、

「へえ、これ作られたんですか!すごいですね〜。」

のあとに、
「実はこれから季節的にも肌着がいるんですよ。」
と話が展開し始める。


義父の左手はぐっと肘を曲げた状態で固まっているため、着替えが難しい。
以前の病院では、伸縮性のある着慣れているものを、と言われており、かぶりのTシャツやポロシャツを用意していたが、今回は
「前びらきがいいんです。」
ということになった。

「介護用に前びらきのシャツも売っていますが、これだけのものを作れるのだったら、家にある肌着を前で切って、マジックテープを縫えばすぐできちゃいますよ!」
と、視線は持参の安全ベルトにいっている。

想像してみてできないことはなさそうなので、家にある肌着を確認してからマジックテープを買いに行こうと思う。

そんなこともあるだろうと、生地を買うときにちゃっかり手芸洋品店の会員カードを有料で作っていたりもするのだが。


マジックテープも つきの弱いものがある。薄手の生地、伸縮性のある生地はあまりベリベリすると生地のほうが負けてしまうため、弱い力で外せるシリーズがあるのだ。
子どもの産着にも弱いマジックテープを使ったことがあり、歳をとると老人から赤ちゃんに帰っていくと迷言を遺しつつある祖母の言葉が頭にうかぶ。

たまに意識が自分の世界に入り込み、部屋のなかを何とはなしに視線を動かす姿は、まだ寝返りも打てない赤ちゃんと似ている。

昔のことを思い出しているのか、それとも別次元であらぬ妄想などしているのだろうか?

あまり騒ぐでもなく、三食食べる楽しみだけは相変わらずの毎日。

静かに時はすぎていく。





そんなわけで、しばらくお裁縫に力をいれることにする。

涼しくなって仕事もしやすいので、ここはまんまと介護士さんの「褒めて伸ばす」罠にはまってみようかと思う。